第 二 章 幽 霊 の 正 体

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「守護霊か……」  言葉だけは聞いたことがあるが、まだ現実味が湧いてこない。  でも、亜美の言うことが本当だとしても、あの夢に出てきた女が守護霊になるなんて、どうして言えるだろう。まったく逆だという可能性もあるのだ。もしそうならどうすればいいのかと、体がガタガタと震え、「神さま、どうかお助けください!」と思わず叫んでいた。  懸命に祈ったが、やはり疲労が原因かとも思った。疲労すると、幽霊を見やすくなるという五郎の話を思い出したが、それは確かに真理だ。だから、特に夜はぐっすりと眠る必要がある。そして、何とか早く健康体を取り戻すことなのだ。そうすれば、もうあの女の幽霊は見なくなるという可能性もあった。 そう思って懸命に眠ろうとしたが、やはりなかなか眠られず、仕方がないのでCDを聴きながら眠ることにした。イヤホンを耳に当て、好きなJポップスを聴きながら目を閉じたが、次第に気持ちも落ち着いてきた。  やがて、俺は夢の中をさ迷っていたが、なぜか車を運転している。ドライブをしているのか、タクシードライバーになったのかは分からないが、車は一定のスピードで進んでいく。車の中には俺以外には誰も乗っていない。 いつもの信号を通り過ぎると四つ角が見えたが、そこを右に曲がれば俺のマンションはもうすぐだ。  そのとき、一人の女が立っているのが見え、女は手を上げていて俺を呼んでいる。俺がゆっくりと停まってドアを開くと、女が乗り込んできた。どうやら、俺はタクシードライバーらしいと茫然と思った。
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