第 一 章 霊 現 象 の 始 ま り

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 夜中にトイレに行くことが何回かある。そんなある夜のこと、トイレを済ませて部屋のベッドに戻ろうとしたとき。窓から何か顔のようなものが見え、俺は思わず凍り付いていた。それは一瞬だったが、確かに髪の長い女性のような気がしたのだ。  もちろん、カーテンの隙間からチラリと見えただけであり、確信があるわけではない。でも、元々臆病なところがある俺はそれからしばらくは眠れなかった。それは四十代の女性だったような気がしたが、一瞬見ただけなので確信はなかった。 ――何で幽霊なんだよ……。  選りに選ってそれはないんじゃないか。抑々幽霊などというものとは生まれつき相性がよくない。もちろん、確かに幽霊と相性の合う奴は少ないだろうが、生来霊感なんてものは欠片もないし、その手の霊感は持ちたくもなかった。  もちろん、幽霊の存在を否定しているわけではなく、霊体の存在は認めている。なぜなら、これだけ心霊写真や心霊ビデオが氾濫している世の中で、そんなことを否定できる筈がないからだ。だから、その手の情報を否定する人間というのは、自分以上に臆病か、それともバカかのどちらかではないかと思ってしまう。  特にスマホの時代になり、それを素人が偶然リアルに撮影することが増えている。そんなテレビ番組も少なくない。スマホのビデオ録画に怨霊や幽霊がもろに映り込むのだから、それを否定することなど流石にできないだろう。なぜなら、素人がそんな映像加工技術を備えている筈がないからだ。
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