第 一 章 霊 現 象 の 始 ま り

4/9
前へ
/97ページ
次へ
 そんなテレビ番組をよく見るが、見たあとで、見なければよかったといつも思う。でも、時すでに遅し。思い切り怖いシーンを、見てしまったのだ。誰だって好奇心にはとても打ち勝てない。UFOやユーマなどの映像には怖さはないが、幽霊はもろに怖い。 もちろん、中にはインチキもあるが、これはいつの世にもある。UFO写真や怪獣ビデオなどもインチキは少なくないが、すべてインチキとして処理する人間の頭の程度は恐らくかなりお粗末だ。猿よりもほんの少しだけ上というレベルだろう。  少なくとも、俺は超常現象をもろに否定したことはない。 それからも窓が気になって眠られず、しばらくの間布団を被って震えていた。外には生温かい風が吹いている。もしかして、俺の人生は祟られているのではないか……。そんな気さえしてならなかったが、それでないと、一瞬だけとはいえ、そんな不気味なものが見える筈がないのだ。 ――もしかして、俺はもうすぐ死ぬのだろうか。  そんな思いに少し震えた。でも、それは聊か大袈裟で、恐らく何かの関係でそう見えたのだと思い直した。自分の家とはいえ、誰だって夜は気味が悪い。特に外には何がいるのか分からず、その恐怖が引き起こした幻覚だったのだ。そう思い込んで何とか眠った。  だが、その二日後、今度は声が聞こえたのだ。――本庄正男よ――そんな声が聞こえたが、俺の名前を呼ぶ声が確かに聞こえた。それはトイレから出て洗面所で手を洗っているときで、俺はギクリとして思わず鏡を見た。でも、恐怖に慄く自分の顔だけしか、鏡には何も映っていない。
/97ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加