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俺は早速幼馴染で親友の斉藤五郎に相談した。五郎は役者志望だが、小学校時代からの親友だ。子供の頃から確かに目立ちたがりの傾向があり、学芸会などでは一人ハッスルしていたが、「僕は将来ハイユウになりたいんや。そして、川中みたいなキレイな女とキスシーンを演じるのが夢なんや」とよく言っていた。川中小百合はクラスのマドンナ的存在で、頭もよく顔も可愛かった。もっとも、五郎はビリに近い成績だったから、相手にもされていなかった。
とにかく、学芸会こそが自分をアピールする場だったから、五郎はここぞとばかりにハッスルしたが、あまりにハッスルしすぎて、舞台の上で見事にスッテンコロリと転んでしまった。そのため、後頭部をしこたま打って失神したことがあったが、俺はそれを舞台の袖で見ていて、思わず腹を抱えていた。
ホントにドジな野郎だ。
そんなところに、五郎の間抜けさが表れていたが、憎めない奴でもあった。人柄もよかったので、それ以来二人は付き合ってきたのだ。
あのときも、川中小百合に自分の素晴らしさを何とかアピールしたかったらしいのだが、それが裏目に出たというわけだ。元々そそっかしかったが、他の女生徒の舞台衣装を踏みつけてしまい、スッテンコロリンと倒れてしまったのだ。
小学校時代から家も近所だったということもあり、これまで実に二十年間も親友を続けている。二人とも三十一歳で独身、ある女性に片思いを続けているというところまでそっくりだ。
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