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もっとも容姿はかなり違っている。俺は子供の頃からイケメンと言われ続けていて、背も180センチに近い。これまで女性にもそこそこ持ててきたが、五郎は俺とは正反対に背も低く、顔だってお世辞にもハンサムとは言えない。おまけに丸い体つきで、主役が回ってくることは間違ってもあり得なかった。
二人とも茨木市から東京に出てきて生活している。高校一年のとき、五郎の実家が東京へと引っ越したのだが、俺は東京芸大時代に再び五郎と巡り合った。それから再び親友となった。
五郎は相変わらず小太りの体を転がすように俺の待っている席へとやってきた。
「何だい? 相変わらず不景気な面してるよなあ? 分かった。ついに彼女に引導を渡されたな」
「お前に言われたくはないよ」
ビールを飲みながら俺はニヤリと笑う。
「ヘヘヘ……ところで、彼女との間はどうなんだい?」
「相変わらずだ。まだ告ってはいない」
俺は西崎香奈枝の顔を思い浮かべながら小さな声で呟く。
「告ったら最後だものなあ? ヘヘヘ……」
「うるせいよ! お前の方こそどうなんだい? ヘヘ、どうせ、もう相手にもされてないんだろう?」
「右に同じってところか」
二人は笑い転げたが、二か月ぶりの再会だった。ビールで乾杯したが、早速五郎は好きなゲソの揚げ物や湯豆腐などを次々と注文する。
「お前の誘いだから、今夜は当然お前のおごりだよなあ?」
「まあ、今日のところは、そういことにしとこうか」
「ヘヘヘ……ありがてい」
五郎はビールを旨そうに飲んだが、相変わらず売れない役者生活で、貧乏生活を続けている。「劇団オーシャン」というチャチな劇団に所属して、実現不可能な「夢」とやらを追っているが、食えないことから、色々なアルバイトを重ねている。
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