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夕方の六時を回った頃、亜美から電話が入った。もう東京に戻ってきているようだったので、二人は有楽町で食事をすることにした。七時過ぎにレストランに到着すると、亜美はもう来ていた。
「疲れただろう。君に余計なことを押し付けてしまったね……」
俺が亜美の顔を見ながら労いの言葉をかけると、「女は愛する男のために働きたいのよ」とニッコリと笑った。「ハハハ、ありがとう……でも、それは男だって同じだよ」俺が笑顔を返すと、亜美も頷いた。
それからバッグから資料を取り出したが、
「まず料理を注文しよう。ここはエビ料理が美味しいと聞いているよ」
「エビは大好物だわ。でも、食べ過ぎると太るからボリュームのあるものは駄目だわ」
「随分努力しているんだね」
二人は思わず腹を抱えた。「もし無理のようなら、俺も手伝うよ」と言うと、「それならオーケーよ」と亜美は笑顔で答えた。
俺は二人の料理を注文してから、その資料に目を通していった。
「やっぱり土井はクロだったわ。えげつないことの限りをやって伸し上がっていった男よ」
「それじゃあ、茨木のときと同じような手口で……」
「ほとんど同じ手口で手に入れていたわ。それに、詐欺を行った六甲不動産の江崎という男はその後二年ほどで事故死しているのよ。崖からの転落死……」
「うむ? 何とねえ……」
思わずゾクリと震えた。
「それから、仙台でも同じようなことをやっているのよ。聞き込みをしたとき、早苗さんと同様に騙された田中裕子という人が土井のことを色々と調べていて、その新聞コピーも頂いたの。その中にあるでしょう」
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