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土井一郎とは社長室で対峙した。パンフのデザイン修正の件と伝えていたが、土井は十五分ほどして社長室に戻ってきた。
「やあ、お待たせしました」
「お忙しいところをお邪魔致します」
「あれで私の方は満足していますよ。いい出来だと思います。これからも、お宅にお願いすると思いますよ」
土井は上機嫌だったが、俺は笑顔を返した。
だが、どうしても土井とは対決しなければならず、仕方なく例の件を切り出した。この問題から逃げることは絶対に許されないのだ。
「実は茨木市の御社の所有する土地のことなんですが……」
「エッ?」
俺が徳永早苗の名前を出すと、予想通り土井社長の顔色が一瞬で変わった。俺は早苗と母との関係や、早苗の幽霊が四度も現れたことを話した。土井が一瞬凍り付いたような顔を向けたが、すぐに元の顔に戻った。
早苗が恨みを残した亡くなった以上、早苗に代わってどうしても報復する必要があった。
「それで、あなたのことを色々と調べさせていただきました。関係者にも色々と面談して……それでないと、徳永早苗さんの霊は僕を開放してくれそうになかったからなんです。自分の命を守るためにも、仕方なくやったことです」
「それで……」
「あなたのやり方がよく分かりました。あなたは神戸市北区の土地や仙台の土地についても、徳永早苗さんに行ったやり方とほとんど同じ方法で手に入れている。そして、詐欺を行った三人の男はそれぞれ自殺、事故などで不審死を遂げているということです」
「……」
「これをあなたはどう言い逃れなさいますか」
俺は土井社長の顔を睨み付けていた。
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