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――妄想か……。
どうやら怖いという思いが見せる妄想のようで、大きく息を吐くと、土井はアクセルを踏み込もうとした。だがそのとき、ガタッと音がして、運転席の窓ガラスに早苗の顔がハッキリと映り込んだ。
「ウワッ!」
土井は肝を潰していたが、その姿も一瞬で消えた。
――ど、どういうことだ。しっかりしろ!
自分に気合を入れたが、もう完全に混乱していた。何とか走り出したが、胸は激しく打ち続けていた。妄想だ、妄想だ、落ち着け。土井は自分に言い聞かすように何度も繰り返す。だが、ふと見ると、早苗はまた前方に立っていた。
「チクショウ!」
もうどうしていいのか分からなかったが、土井は車のアクセルをいっぱいに踏む。そして、早苗をそのまま轢き殺そうと突っ走った。一瞬で轢き殺し、それからすぐに後ろを振り返ったが、早苗は何と後部座席に座っていた。
「ウワー!」
土井は物凄い悲鳴を発したが、次の瞬間、早苗はいきなり土井に襲いかかってきた。そして、土井の首を絞めたが、土井は慌ててハンドルを左に切っていた。早苗はなおも土井の首を絞め続けていたが、そこはちょうど柵の途切れたところだったので、車は岩にボディを擦りながら一気に乗り上げた。そして、そのまま海へと落下していった。そのまま海の中へと呑み込まれていったが、車の中では早苗はなおも土井の首を絞め続けていた。土井は極限の恐怖に早苗を必死に引き離そうとしたが、どうやっても、早苗は離れようとしなかった。
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