プロローグ

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「私、水野部長が好きです。付き合いたいです」 お酒の力を借りないと、とてもじゃないけど告白なんか出来なかった。 しかもそのタイミングさえ分からずに、会話の流れをまるで無視しての突然の告白。 もう22歳にもなるというのに、さりげなくとか、なんとなく、なんて雰囲気も作れずに、ただ緊張と焦りで要点だけが口から飛び出した。 水野部長の退社時刻を見計らい、ストーカーのように待ち伏せまでして、やっと二人きりになれたのに。 私は言い切ったあと、じっと見つめて返事を待った。 期待はしてなかった。 彼を狙っている女子社員はいっぱいいる。 どうせフラれるなら、酔いのあるうちのほうがダメージは少ない。たぶん。 水野部長はグラス片手に見つめ返してきたけど、そのまま口を開かない。 鋭い目力で、なんか怖くなってきた。 普段は、彼の笑い顔は柔らかくて可愛いとさえ感じるけれど、時々攻撃的な目付きになる時があるのを忘れていた。 私、失敗したかも。 怒られるかも。 明日からどんな顔をして、この上司に会えばいいの?
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