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「あんた一人で二つも食べる気!?」
デスクに置いたトートバックの中を見て、凛子(りんこ)はわざと驚いた声で言った。
中身は、手作りのお弁当が二人分。
「まさか、こんなに食べられないよ。いつもより多く作っちゃったから、一つは凛子に持ってきたの。コンビニのパンばっかりじゃ飽きるでしょ?」
「え、まじ!? 助かるー! 今日遅刻しそうだったから、コンビニ寄れなかったんだ」
「ほんと?じゃあ、ちょうどよかった。一緒に食べよ」
岡崎凛子は私と同じ派遣社員で、歳も同じ。
正社員に比べたら肩身の狭い私たちは、ごく自然に仲良くなった。
彼女は裏表のない性格で、思ったことは何でも口にする。
そして正義感が強くて、気も強い。
それが災いして、トラブルを起こした事が何度かあるけど、凛子は決して間違ったことはしていない。
私とは違う意味で、世渡り下手な彼女を私は信用しているし、彼女もまた私を好いていてくれる。
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