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スマホが鳴った。
桔平からだった。
なんだろう?
コソコソ見ると怪しさ全開だから、いつもと変わらぬ仕草でラインを開く。
隣の凛子も、特に気にしてない様子。
>それ俺のだろ?
―――――えっ!?
咄嗟に視線だけで周りを見渡す。
いない。
のになんで?
なぜ桔平が二つのお弁当の存在を知っているのか、記憶を辿る。
―――そうか、聞かれてたんだ。
会社で凛子と話してた内容を。
―――いつの間に。
私は画面をタップする。
>>違う
>嘘つけ
>>だって夢だったの、屋上で食べるのが
>なんだそりゃ。そこ公園だろ
>>そうゆー意味じゃない
>じゃあ、どういう意味だ
>>説明ながくなるから
>でも俺に作ったんだろ?
>>そう
>ならどうして岡崎に食わすんだ
………そんなの分かってるくせに。
私は文字を打つ代わりに、猫のキャラクターが怒っているスタンプを貼った。
>怒るなよ。夜電話する。
私はまたキャラクターに代理をさせた。
【別にいいけどぉ】と、ふてくされている猫に。
>絵で返事をするのはやめろ
あ、怒った。
桔平はスタンプを使わない主義で、相手にスタンプを多用されるのも嫌いだ。
私はそれを承知でわざと、
【ごめーん】
猫に謝らせた。
それからぴたりと返事がこなくなった。
でも大丈夫。
夜にはちゃんと、電話をくれるから。
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