小さな望み

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********** 『昼の、あれは何だよ』 その夜、やっぱり彼は電話を掛けてくれた。 私は、高校の頃の苦い話と、叶わなかった甘い憧れの話を、繋げて説明した。 『そうか、それを俺としたかったのか』 「うん。でも桔平を想って作っただけで、最初から凛子にあげるつもりだった。無理なのは分かってるから」 『そうだな、会社の屋上は普段立入禁止だからな』 ―――――は? 「そうゆー問題?」 彼は私の不満な声を無視して言う。 『じゃあ、次の休みに弁当作って持って来い。屋上で一緒に食おう』 「―――え? 屋上ってどこの? まさか桔平のとこじゃないよね」 『マンションの屋上も立入禁止だ。違う、そんな所じゃない』 「………じゃあ、どこ」 『行けば分かる。それよりハート型とかやめろよ』 「―――え?」 焦げた玉子焼きや、ふりかけでハートを描いて怒られた妄想などは言ってない。 ただ、じゃれ合うような甘い雰囲気を伝えただけ。 なのに、 「どうして分かったの!?」 『………やっぱり。お前ならやりそうだからな。飯の上に、海苔で【LOVE】って貼るのもやめろよ。俺の歳を考えろ』 「………ねぇ、なんでそんな風に先読みできるの? もしかして、昔そうゆーお弁当、誰かに作って貰ったことあるとか?」 『ないよ。言っただろ? お前ならやりそうだって。それを想像しただけだ』 「そっか……………じゃ、タコさんは? 」 『………赤いウインナーのやつか?』 「ダメ?」 『………その程度は仕方ないか』 「ほんと? じゃあ30匹くら、」 『そんなにいらない』 「冗談だって」 私は笑ったあと、彼の名を呼んだ。
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