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「賑やかだね」
「日曜だからな」
お弁当を食べながら、沢山の親子連れを眺める。
はしゃいでいる小さな子供たちに、私はふと思い出す。
「………桔平は、子供はいないの?」
「作るつもりはあったけどな、そんな間もなく別れたから」
「………どうして離婚したの?」
また《お前には関係ない》と、突き放されるかも知れない。
だけど、深い関係になってから、彼を知りたい気持ちが膨らんでいて、黙ってはいられなくなった。
「俺が頼りなかったから」
「―――え?」
「妻に裏切られた」
「裏切られたって……」
「他の男とくっついたんだよ」
「それって、不倫」
「そう、しかも浮気じゃなくて本気の」
「桔平みたいな優しい旦那さんがいるのに、なんで他の人になんか」
彼は乾いた声で笑う。
「優しいだけじゃダメな女もいるんだよ」
「そんな………」
「あいつは、俺を愛した事を後悔していた。だから最後のプレゼントに、俺から離婚届を渡してやったんだ」
「……………」
返す言葉が見当たらず、私は俯いた。
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