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「イチゴに渡したい物があったんだ」
思い出したようにそう言って、彼は裸のままベッドをおりた。
戻ってきた彼は、小さな箱を手にしていた。
「え? なに?」
受け取って、小箱を開ける。
「……………あ、これ」
プラチナのネックレス。
トップには、同じくプラチナで作られた猫。
上品なデザインの猫の下には、輝くダイヤがぶら下がっている。
―――――あのデパートで、唯一私が欲しかった物。
「えっ、なんで、なんで分かったの? ってゆーか、いつの間に!?」
「顔見てりゃわかるさ。値段見たから言えなかったんだろ? 欲しいって」
「……うん、そう」
「だからこっそり買っておいたんだ。最後までお前が何も言わなかったら、あとで渡そうと思ってな。勿論、遠慮してもっと安い物をねだったとしても、両方あげるつもりだった」
「………嬉しいけど……これすごく高かっ、」
「値段なんか、どうでもいい。俺は、イチゴが欲しいものをあげたかった。喜ぶ顔が見たかった。ただ、それだけなんだよ」
彼に遠慮は無意味。
むしろ無駄な遠慮は彼を哀しませる。
だから、
「桔平、ありがとう。ほんとはすごく欲しかったの。嬉しい。宝物にするね」
素直に笑顔をみせた。
「高いからって、引き出しに閉まっとくなよ? 俺が今つけてやる」
彼は、座る私の後ろから、ネックレスの金具をとめた。
「いいじゃないか、とても似合うよ」
前に回って、彼は私の首元と顔を見て言った。
「ほんと?」
「ああ、猫なんてお前らしいしな。―――そうだ、ひとつだけ命令がある」
「―――――は?」
せっかく余計な思いが抜けて喜んでいるところに、
命令って、なに?
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