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「……中谷さんは、彼氏とかいるの?」
「今はいません」
「……じゃあ、そのネックレスは? 最近いつも着けてるよね。彼氏に貰ったんじゃないの?」
―――正解。
ってゆーか、よく見てるなこの人。
ストーカー?
「いえ、安かったので自分で買いました。ちなみにこれは千円です」
この嘘を、凛子はあっさりと信じた。
追求されずに済んで安心した反面、ガッカリもした。
このネックレスがたった千円だと、まさか本当に信じるとは。
彼女の目が節穴なのか、
それとも、
私が身に付けると価値を下げてしまうのか。
どちらにしても、腑に落ちない。
「―――千円? 本当に?」
「はい」
「それ、そんな安物にはとても見えないんだけど。逆にすごく高い物だと思ってた」
違いの分かる男が、ここにいた。
つまり【凛子の目が節穴だった】ほうに決定。
「私、いつも安い物しか買わないので」
「そっか。少なくとも、ブランド品とかを買い漁るイメージはないよね。だからそれも、彼氏からのプレゼントかと」
「本当に彼氏はいません」
「そうなんだ。じゃあ………誘っても……いいかな」
「はい?」
「今度二人で、食事でもどう?」
「―――――えっ!?」
「そんなに驚かなくても………ダメかな?」
「あ……えと……ダメですっ!! 無理ですっ!! 嫌ですっ!!」
……………この私のどこに余裕があるって?
「嫌、か………僕、そんなに嫌われてたんだ…」
しまった。
急な状況に、ボキャブラリーが足りなさすぎた。
眞島さん、すごく傷付いた顔してるし………。
「すみません……そんなつもりじゃなくて……あの、最近忙しいので、落ち着いて機会があった時にでも……」
「―――本当? じゃあ、また誘ってもいい?」
「………はい、是非」
―――――あああああ
脳内の私が、しゃがみ込んで頭を抱える。
《是非》じゃないでしょ私ってば。
フォローのつもりで、つい言っちゃったけど、
また誘われたらどうするの?
上手な断り方なんか知らないよ。
ましてや、一回失敗してるし。
桔平と付き合ってるって言えたら楽なのにな。
………どうしよう。
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