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て笑った。
「滑ったんじゃないよ。あれは滑ったんじゃなくて誰かに引っ張られたような……」
牧人はこうちゃんの手を掴みながらそんなことを言った。
「そんなわけないだろ、ここらへんには俺とお前とまさこしかいないんだぞ?」
「いや、俺も見たんだ。牧人の足に伸び迫る黒い影のようなものを!」
こうちゃんは俺の必死な態度に気圧されていたようだが、すぐにいつもの調子を取り戻し
「それなら、動画を確認してみればいいんじゃないか?撮っていたんだろ?その携帯で」
そうだった、確認してみよう。そうすれば何かわかるかもしれない。
動画にはしっかり映っていた。俺とこうちゃんと牧人と四人めの黒い何かが……。
一ヶ月後。
あの動画を見た後、怖くなった俺たちは着替えもせずに車に乗って急いで帰った。レジャーシートとパラソルを置いて来てしまったがそれはもうどうでもよかった。
牧人はというと足首に手で強く掴まれたような痣ができていた。医者もただの痣だと言っていたが未だに治っていないらしい。俺とこうちゃんはあの日のことなんか忘れ、もう普通の日常に戻っていた。
「さて、今日は何をして過ごそうかな」
ふと携帯電話に目をやると、ちょうどメールの受信をお知らせするメロディーが流れていた。俺にメールが来るなんて珍しい、誰からだろうか。メールを確認すると送り主は見知らぬメールアドレスだった。メールの本文は
動画を見て
とあった。ファイルも添付されている。このファイルを開くと動画が見られるのかな?何時もなら迷惑メールだとすぐに切り捨てたところだが、見たい衝動に駆られてしまう。気になるので開いてみることにした。
「まぁ、まずそうだったらすぐに閉じればいいしね」
と誰にも聞こえない独り言を呟きつつ添付されたファイルを開く。すると動画が流れ始めた。
コレは……!
俺たちが海に行った時の動画だった。しかも牧人が飛び込む瞬間の映像。俺はあの黒い影が写っているんじゃないかと不安になったが、その不安はすぐに消えた。
「やっぱり見間違えで黒い影なんて最初からいなかったんだ」
「だってこの動画には俺とこうちゃんと牧人の3人しか映ってないんだし……」
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