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02 - 神と魔、そして人が共存していた
世界には古く神と魔、そして人が共存していたが、やがて神々は別世界に去り、人間と魔属だけになった。
残された二つの種族は互いの領域を侵したり侵されたりしながら、それでも一応の均衡を保っていた。
しかし、めぐる星々の力によりその影響を受けやすい魔属は、百年ほどの周期で急激に勢力を増大させる。
人々はそれを暗黒期と呼んだ。
魔属の数が増し獰猛になる暗黒期は、彼らの糧食である人間にとって絶望の月日だったからである。
暗黒期をくりかえすたび確実にその数を減らし続けた人々は、耐えかねて神々に懇願し、二柱の神の助力を得て魔属をしりぞけた。
約百年ごとの絶望の時に必ず人々を救った神――大地の神と大気の神は、自らの力をわけ与えた二人の赤子を人間たちのなかに誕生させた。
この二人の選ばれた人間をマラティヤという。
彼らは生まれながらに身体に刻印された大地と大気の紋章をその証とする。
世界のどこに生まれおちるかわからないマラティヤの、目に見える特徴は神のしるしだけだ。
マラティヤを輩出した家門は属する国から優遇されるため、暗黒期が近づくと虚偽申告が多発する。
しかし、紋章が身体のどこに発現するかは預言士しか知り得ず、さいわい長い歴史のなかでマラティヤを誤ったという記録はなかった。
神の紋章を授けられた子供は幼少より、大国シヴァスか東方の法術国家ビジャールへ召しあげられる。
王侯貴族と同等の待遇をうけ、数々の国属法術士や軍人、名だたる知識人から高度な教育をほどこされるのである。
そして成人をむかえると魔属狩りのために世界中をめぐり、やがて中央大陸エシュメへ渡って暗黒期を終わらせる浄化を行うのが、与えられた使命だった。
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