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僕は内臓を守りながら、強い蹴りから身体を丸めて防御していた。片手では一人の首を掴んで動きを封じていた。僕は屈強ではないが頑健だ。そう簡単に骨など折れるわけがない。
きっかけはその筋の人がカラオケの曲に文句をつけて来たことだ。いや、もっと言えば店の選択を間違えたのだ。
流れを押しとどめる事などできず、そのまま僕は殴られ、蹴られ、床の上でどうにか自分を守るのに必死だった。
「こいつ、まだ動いてやがるな」場数を踏んだ者の重い声が響いた。
殺せば面倒な事に成る。そうは計算したのだろう。思い切り蹴る、それ以外の攻撃はなかった。
口の中は鉄の味がする。歯が折れていないのは顔を抱え込んで守っているからだ。
とうとう、僕の弱点を男は見つけた。
背中を丸めて頭を抱える。つまり後頭部が全く防御されていなかったのだ。
重い蹴りが後頭部を捉える。意識が飛びそうなのに耐える。片手を回して蹴りを受ける。
それでも蹴りは止まらなかった。
解放されたのは僕が気絶寸前で横たわったからだろう。
後頭部の縫い傷の数はきりがないほどだった。頭皮が裂け頭蓋が露出していたかも知れない。医者はごく事務的に針金で僕の頭を縫った。
この話のオチ? 何もかもが僕のせいになっていて、大金を払わされたのは僕だけだった。皆様お気を付けて。いつ起きるかなんて分かりませんよ?
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