錆びついた家

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N山さんは、その『首吊りの家』に案内させられた。が。 「さっき勢いよく開いたはずの引き戸には、斜めに板が打ちつけられているんだ! で、引き戸の両側には馬鹿でかい釘が突き立っていて、その間を何重にも鎖が巻きつけられてる。その鎖というのが」  錆を吹いて、ビクともしない。つまり、その家はずっと以前から人が出入りできる状態ではない? 「俺がその場を離れて、せいぜい数十分だぜ? オフクロにも必死で訴えたよ。嘘なんかついてないって」  母親は怒らなかった。ただ二度とここに来ないように念を押したそうだ。執拗に。 「・・・その家じゃ、昔な。暮らしていた夫婦のうち、夫が突然奇声をあげて家から飛び出したらしい。どこに行ったかは分からん。で、妻の方はいくら捜しても見つからなくてな。その後は権利問題とかで空家状態だったと」  N山さんが、その事を知ったのはさらに数年後。不審火で問題の空家が消失してからだとか。 「俺みたいな『モノ』を見たヤツ、結構いたらしい。もっとも焼け跡からは、ナニも出なかったらしいがね」  一応な、と最後にN山さんはつけ加えた・・・。
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