終わりへの鐘

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1. 彼女はゆっくりと煙を吐く。 もうどれだけの年月吸いつづけてきたのか記憶も定かではないタバコ。だが、今日を限りに手を切ろうと考えている。 そんなことを考えたのは今日が初めてのはずだ。多分。 「やめよう、うん。今日限り」 覚えていれば、の話だけど。 灰皿がわりの欠けた小皿に吸い残しとフィルターを押し付ける。 勢い余って押し付けすぎた。皿が傾くと同時に、爪にまだ火が燻っている葉がくっつく。 彼女には熱い、という感覚はあまりない。ぼんやりと自分の爪を見ていると、けたたましくドアブザーが鳴った。 ドアをぼんやりと見つめているともう一度ブザーが鳴らされる。 どうするんだっけ? ああ、ドアを開けるんだ。 ゆっくりと立ち上がる。 ドアの向こうにいる人間は余程急いでいるのか3回目のブザーを鳴らした。 近所迷惑だわ。慌てないでよ。 人差し指を口に当て、ドアノブをじっと見る。 そうそう。これをこうやって……。 ゆっくりと、ロックのつまみを回す。 縦から横へ。 昔はもう一つ付いていた気がする。どんなのだったかしら。 彼女が記憶を手繰ろうと目を伏せた瞬間、解錠されたことに気づいた相手が勢いよくドアを開けた。 「迎えにきたよ」     
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