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進一は思いもよらない愛の告白に面食らった。俊子と出会った時の印象は、母の生き写しだ。
丸く平坦な顔もさることながら、地味な花柄プリントの丈の長いワンピースに肌色のストッキング。きちんと纏めた髪に薄いメイク。何もかもが母好みで冴子の真逆だった。最初は母への機嫌取りなのかと思っていたが、その内に本人の好みがそうなのだと気付いた。
そして進一は余計なことにも気付いてしまった。
この女と結婚するということは、即ち母と添い遂げるのと変わらない、と。
ーーもしかして俺は一生、母の監視下に置かれる、ということなのか?
それに気づいた進一は母の言うとおりに結婚はしたものの益々帰りが遅くなった。
二人の母、二人の妻。冴子の時とはまた違う意味で、息の詰まる生活を強いられた。
ベッドの中でも度々母を抱いている錯覚に陥った。進一は何度逃げだそうとしたか分からない。
それでも子供は出来た。自分にそっくりなど子供は可愛かった。だがふとした瞬間に思ったものだ。この子はこの先、母親に支配されながら一生を送るんだろうか、と。
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