135人が本棚に入れています
本棚に追加
俊子……
「………すまない」
今まで
「いいのよ」
お前を愛せなかった
「………許してくれ」
あの世に行っても
「気にしてないから」
俺はお前を待ってはいない
「花を」
持って行こう
「ああ、今日はつぼみがみんな開いたわ」
かの人の元へ
「見せてくれ」
真っ白な芍薬を
「珍しい。ちょっと待ってね。花瓶毎持っていくわ」
あの日着ていた真っ赤な打ち掛けに咲いていた大輪の花。
「い……ま……」
「もう、待って、ほら。綺麗なききょ……」
床にガシャリと落ちる音が病棟の奥の部屋から聞こえた。
その直後、女の絶叫とナースコールが立て続けにフロアを駆け抜けていった。
最初のコメントを投稿しよう!