終わりへの鐘

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俊子…… 「………すまない」 今まで 「いいのよ」 お前を愛せなかった 「………許してくれ」 あの世に行っても 「気にしてないから」 俺はお前を待ってはいない 「花を」 持って行こう 「ああ、今日はつぼみがみんな開いたわ」 かの人の元へ 「見せてくれ」 真っ白な芍薬を 「珍しい。ちょっと待ってね。花瓶毎持っていくわ」 あの日着ていた真っ赤な打ち掛けに咲いていた大輪の花。 「い……ま……」 「もう、待って、ほら。綺麗なききょ……」 床にガシャリと落ちる音が病棟の奥の部屋から聞こえた。 その直後、女の絶叫とナースコールが立て続けにフロアを駆け抜けていった。
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