終わりへの鐘

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7. 「はい?はい、すぐ行きます」 PHSを取った看護師が、冴子達に申し訳なさそうに頭を下げる。 「緊急の呼び出しが入ったのでちょっと席外しますね。宜しかったらパジャマに着替えておいて下さい」 バタバタと看護師が駆け出していく。 「着替えようか」 引き戸のドアを閉めて男が文句を言う。 「音が漏れてしまうなあ」 冴子はパジャマを持ち上げた。着替えよう。 「私がするから」 ボタンに掛かった冴子の手首を掴み左右に広げる。 男が冴子の首筋をぺろりと舐めた。 「子供を産んでないからか、冴子はどこにも弛みがないな。肌も綺麗だ」 子供。 産めなかった。 唯一授かった子は流れてしまった。 忘れかけた記憶がまた戻ってくる。
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