終わりへの鐘

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2. 騒々しい。 進一はこの午後の時間帯が好きではない。うとうとしかける度、人の声やがらがらと機材の乗ったワゴンの音が耳を障る。 個室であっても廊下をバタバタと走り回る音は聞こえて来る。 吊り引き戸は下が空いているのだ。仕方がないと思っていてもイライラする。 「今日は土曜日だからかお見舞いの人も多いようよ」 妻の俊子は頭側のキャビネットで花を弄りながら独り言のように呟く。 「………そぅ……」 今日はもう声もろくに出ないようだ。思わず片頬が引き攣る。 あと何日生きられるのだろう。 ここに入ったのは何月だった?ここに入ったのは何回目だ?ここに入った最初は何年前だ?ここに入ったのは……… 止めよう。 今更病歴を思い出す事に意味はない。既に未来は確定され、しかもそれは目前に迫っているのだ。両腕には無数のあざが出来ている。点滴針をあちこちに刺した跡だ。 入院の度に衰えていく筋力。今では腕を上げるのでさえ苦しい。 どうせなら意識も朦朧となればいいのに。いやいっそ頭が壊れてしまった方が楽だ。 だがあいにく進一の脳機能は全く正常に動いている。 瞼を閉じる。     
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