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「こいつ…どっか悪いんじゃねーの?」
お茶のコップをちゃぶ台に置きながら聞いた。途端、母親の表情が固まった。瞼を伏せ唇を引き結び、険しい面持ちで沈黙したあと、口を開く。
「わたしも心配だったからこの前の検診の時、先生に聞いてみたの……もしかしてどこか痛いところがあるんじゃないでしょうかって。だけど特に異常はないって」
ーーこいつ、どっか悪いんじゃねーの?
……おそらく自分は余計な一言を言ってこの人の地雷を踏んだのだと気づいた。しまった、と後悔する。謝ればいいのかどうしたらいいのかわからなくなり適当に「…そうなんだ」と答え自分の部屋に退散しようと背を向けた。
「あ!待ってっ」
「何」
呼び止められ振り返る。
「聞いて…この子ね、すごくそっとしめたドアの音や、遠くから聴こえる車のクラクションや鳥の囀りなんかでもすぐに目を覚ましてしまうの…。先生にどこか悪いんでしょうかって相談したら、なんて言われたと思う?ーー生まれてはじめて聞く音や耳慣れない音に怯えたり驚いたりするのは当たり前なんだからって……大人のあなたでもそういうことあるでしょ?、って……。びくびくするよりもっとおおらかに接してあげないと赤ちゃんが可哀想よって……」
怒られちゃったの…と身を縮めて俯いた。
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