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聞き耳サプリ
「ポテトッ、アイスッ、アメリカ――ンドッグッ」
「うるさいって……黙って走れば」
高級ジムだとかなり恥ずかしいが、ここはスポーツセンターのマシン室で、周りは年配の方が健康の為に利用してる感じだ。
母にジム通いを勧めたが続くか分からないし、入会金まで取られて勿体ないと正論を言われ、試しに初スポーツセンター体験をしていた。
どのマシンでも一日六百円で使い放題なので、庶民の味方に感心していたが、ウチのドラム缶体型は不服のようだ。
食べ過ぎだと注意してたのに、食欲の秋と調子に乗る母に、健康診断でコレステロール値が高いと通告が届き妹の怒りに触れてしまう。
症状がないのをいい事に、年寄りはふっくらしてた方が可愛いと抵抗していたが、誰も納得せずランニングマシンに三人並んで走っている。
ここはペットを預かる場所もあるので、近所を散歩するついでに寄ったり、プール等も追加料金二百円なので半日くらい潰せると妹は満足そうだ。
泳ぎが得意でない私達が利用する事はないが、母に少しでも痩せてもらえればと一緒に参加してるのに、本人のやる気がイマイチなのでイラッとする。
挙句の果てに掛け声が要望に変わっているので、瑠里はイライラしながらツッコミを入れるといった具合だ。
「結構運動したから、帰りハンバーガーとポテト食べたいな」
「若ぶっても可愛くないし、運動量よりカロリーオーバーしてるよね」
「そう?なんか息切れしてガリガリになった気分」
お相撲さんのようなお腹は少し走った程度ではビクともしていないが、本人はやり切った感でみなぎっている。
マシンを降りると、仕上げだと言わんばかりにマットの上でストレッチに入っていて、妹と顔を見合わせ溜め息をついた。
「あれは監視役がいないとサボるに違いないね」
「うん、ドラム缶は他人に厳しく自分に甘いから」
目を離した隙にロッカーに向かう母の後を追い、着替えを済ませると、嫌な事から解放されたかのように足取り軽くなっている。
ペットお預かりルームはそれぞれコインロッカーみたいに部屋が仕切られていたが、明らかに他のワンちゃん達が奥の方で小さくなり鳴き声も全くない。
区切られてるので王子達に気づかないだろうと安心していたが、動物的な勘なのか小刻みに震えている子犬もいた。
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