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「視線を動かさず聞いて下さい、北側のベンチに離れてますが合計四人座ってます」
「――それで?」
地図を指さしすぐ話に乗ってくれたレッドに驚いたが、その中にストーカーが居ないか、移動する時に自然に確認して欲しいと続けた。
「ふふっ、それらしくなってきたわよぉ」
「ちょっと、コレはドラマじゃないんだよ……でもワクワクするね」
実際は何が起こるか分からない状況だが、女性は何処かで好きな映画やテレビ番組、小説等……入り込む人が多い。
妹や母がいい例だが、私も虎の世界では夜の蝶をイメージして演じる事を楽しんだ気もする。
そう思ってくれる方が、恐怖心や不安を煽る事なく落ち着いて行動出来るので逆に有り難い。
朧を悪代官と仮定してトレーニングしたように、彼女達も妄想を膨らませ、怖い気持ちを紛らわせて欲しい。
現実から目を背けた行動も、こんな時に役に立つと身を呈して感じているので分かっている。
「じゃあ次はここに向かいましょうか、ベンチの前を通りますし」
「御意!」
返事に驚いていると私が使うのを聞き、真似するタイミングを狙ってたらしいが、妹の忍者探偵譲りだとは言い出しにくい。
「あっちには可愛くて美味しいアイスクリームの店があるよ」
もっとぎこちなくなると思っていたが、スイーツ名が登場したおかげで皆自然に笑みが漏れ、足取り軽くベンチの前を横切る。
離れてから聞き出そうと思っていたが、女性四人を甘く見たのか、男女ペアだった男が背後につきレッドの腕を掴もうとしていた。
「おい……汚い手でレディに触るな」
「なっ、お前何者だ」
振りほどこうとしてもビクともしない私の腕を、今度は肘でへし折ろうと容赦なかったが、普通の戦いならこんなヒョロもやしに負ける気がしない。
この間に連れ去られるのが一番最悪なので、瞬時に終わらせようとすると、ホットケーキに付き添われキノコ型の部屋のドアに入る女性達の姿が見えた。
「ちょっ……私だけ置いてけぼりかい!」
残ったメンバーは四人と私達助手だけだが、さすがに向こうも一瞬だけポカンとした表情になる。
「くそっ、あの豚を連れ戻して来な!」
八つ当たりのようにイラついて命令する女だったが、逆にもう誰も居ないので、普段通りでいこうとニヤリと笑った。
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