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食べ終わる頃に滋さんが現れ、檻を持ち扉を出したがパンは消えていたので、お気に召したのかもしれない。
やっとパネル部屋に戻り、消毒通路の風圧で顔をブルブルされると、シャワーと着替えを済ませ受付に向かった。
木村さんにサプリの効果を報告すると、大成功と嬉しそうだったが、聞こえない方がいい事もあると思いつつ指示された部屋に入った。
コーヒーを淹れ椅子に座ると、ホッとする味に仕事が終わった実感が湧くが、もっと早く片付けてればと悔いも残る。
「まぁ、ハプニングあったし仕方ないよね」
あとは帰るだけなので忘れようと紙コップを口に運んでいると、瑠里は紙にゼロを書き、億って数が多いと感心していた。
「マジでテルデの依頼受けて売り飛ばす気?」
「いや、ちょっと聞いた事ない額だったから書いてみようと思って」
手に入れば細々と死ぬまで生活出来そうだが、大金に目がくらむと、監獄にいる絢人の師匠みたいになる恐れもある。
「今でも他では手に入らない給料貰ってるんだから、上見たらキリないよ」
「無論承知してる、でもテルデの仕事は引き受けそうじゃない?」
瑠里の予言は当たるし巻き込まれたくないので、金刺繍に話がいけばいいと祈る気持ちで飲み干した。
リーダー達が部屋に入ると、後から木村さんも顔を覗かせカゴに入った巨峰を抱えていたので、ピクッと動きが止まった。
大好きだが結構なお値段がするので、たまに買ってもマスカットか、皮ごと食べれるタイプもスーパーの入口に貼り出される広告の品に載る時くらいだ。
「お疲れ様、社長のお土産だからどんどん食べて」
黒の宝石といっても過言ではない巨峰のランクは高価で絶対に手が出ない品なので、笑みを浮かべ即座に一房掴み確保する。
「うわぁ……やっぱブドウの王様だよね、味も濃いし水々しさもある」
感動しながら噛みしめていると、啄はスピードを緩めることなく食べ進めるので手を叩いた。
「イダッ!何すんだよ」
「愚か者めが!こんな高級品をスナック感覚で口に運ぶな、宝石を育ててくれた農家の方に敬意の気持ちを込めて食せ」
どこの仙人だとツッコまれたが、大粒の巨峰を普通のリアクションで食べる金持ちへのひがみも入っていた。
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