聞き耳サプリ

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「だからさぁ……巻き込むの止めてもらえる?」 「(あるじ)が心配な可愛いペットの頼みを聞いてくれてもいいだろう」 自分で可愛いとつける時点で、ウチの母的な図々しさが垣間見えるが、飼い主の身を案じ様子を見に行きたいという部分は分からなくもない。 イナリが他人にこんな頼みをしてくれたら小躍りして喜んでしまうが、同情だけで動ける内容でもなく、刺繍のランク的にいってもメンバーからは外れたい。 「あのさ、私らはまだペーペーで新人なんだよね、アンタを助けた死神クラスに頼んだ方が……」 「お前ら金は欲しくないのか?」 「貧乏人が欲を出すとロクな目に合わないから…って、なんで半笑い?ムカつくんだけど」 貧乏と聞くと急に小馬鹿にしたような目が、ニヤリと笑ったように見え睨み返した。 「ウチの飼い主も貧しいが、お前らみたいじゃなく、真っすぐに生きていて共に歩みたいと思わせてくれる」 憎たらしさ全開の表情は、ウチのキセロを思い出し、余計に腹が立ってきて断りたい気持ちに拍車がかかる。 「まぁ落ち着きなさいな、般若面しなくてもビジネスなんだしぃ、お食事券三枚貰ってるんだから」 瑠里は肉の為なら我慢という腹積もりらしく、特に頭にくる様子もなく平気な顔をしている。 姉なのに一人熱くなるのも恥ずかしいので、口をつぐむとテルデはプッと吹き出し、もう笑いを堪える気はないようだ。 「食事券で動くとは安く見積もられてるな、他の仕事考えた方がいいぞ」 「馬鹿め!金とは別におまけで貰ってんだよ、焼肉でしか動かない高い女だからね」 弁解になってない気もするが、小動物の憎まれ口なんて聞こえない方がいいと、サプリの効果が早く切れて欲しかった。 「いう事を聞けば金の心配はいらない、一刻も早く様子がみたいだけだ」 「御意……手当は弾むよう木村さんに伝えると約束してもらおう」 言い合いをしていたのに、何故か商談が成立する関係をどう表現していいか分からないが、後戻りはできないようだ。
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