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受付に戻ると木村さんが巨峰を一箱渡してくれ、幾分か気分は持ち直したが、明日の事を考えると風邪で休みたいくらいだ。
家に着くと母は土産を受け取り嬉しそうだったが、今日のサプライズはそれだけではない。
仮眠してからいつもの焼肉屋にいこうと食事券を見せると、少女のように瞳を輝かせ摘まんでいた芋けんぴの袋を閉じ、箱にしまっていた。
イナリが近くに寄っても話声は聞こえず、改めてイザリ屋のアイテムの優秀さに脱帽だが、何か言われてたらショックで休んでいたかもしれない。
シャワーと着替えを済ませ部屋に直行したが、珍しくイナリもベッドに登って来て布団の上に丸くなるので、その姿にジーンときていた。
テルデもこんな風に飼い主と一緒に過ごす時間を奪われ、自分の身を売ってまで助け出そうとしている。
ウチだったら……と想像して目を閉じると王子が逆切れし敵を全滅させ、攻撃が私達まで当たって死にそうになる悪夢で目が覚めた。
焼肉は毎度のごとく戦争のようだったが、店のランクがいつもより少し上に出来た。
王子達もゲージに入れ連れて行き、野菜をあげながら私用にビビンバも注文したので、今回は大満足だった。
家に帰ってシャワーをすると再びベッドに入り、起きたのは翌日の昼過ぎだが、十月も半ばに入ると布団の中の居心地はいい。
以前住んでいたボロアパートのせんべい布団でも包まっていた程なので、今の快適寝具だと尚更だ。
でも今夜は仕事だし渋々起き上がると、二人はテレビの間で時代劇を見ながらお菓子を摘まんでいた。
姫をなき者にし自分が後を継ぎたい性悪女が、手下を使って出先で襲わせるが主役に助けられ、町人のフリで数日お世話になるお話だった。
主役も身分を隠しているのでお互い様だが、育ちの良さが端々に出ているので、私でも金持ちだと気づきそうな女性だ。
そういえばテルデの主人がどんな人……いや、種類なのか全く聞いてなかったが、貧しくて濡れ衣で捕まったと言っていた。
あのガラ悪のサイズからいうと、飼い主も可愛い種類であって欲しいので、リス人間もしくは猫人間程度だと有り難い。
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