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「大丈夫、見た目は人と変わらないから」
そう言ってもらい少しホッとしたが、何故画像を見せたのかというと、牛の世界はかなり広く種類も多いらしい。
なのでどのタイプなのか把握してもらいたいが、牛の種類を言っても私達が知らないと思ったからだ。
「ガウルという種類だけど、見た事ないよね」
「……はい」
アジア一帯に住んでるらしいが、海外旅行に行った事がないのも把握されてるので話は早い。
その牛は大きな角が特徴的な狂暴な動物らしいが、そのフレーズにギクリとして木村さんを見る。
「普段はそうでもないけど、危機が迫ると……って感じだから」
私はこの辺で既に断りを入れたかったが、瑠里はまだ黙って先を促すので、口も出しにくい。
羊の世界と風景や街並みが似ている場所で、捕まった主人は無口な職人だが、人と関わりたくないのか家の付近に民家はない。
自宅兼工場になっていて、依頼があればアルミの煙突を作り生計を立てているが、趣味で野菜や米も育てているので食糧には困ってないらしい。
聞くだけだと貧しくても、私達の親よりはずっとしっかりしているし、テルデがあれだけ慕っているのを見ると優しい人のように思える。
そんな平和な暮らしが急に壊され、主人は捕まりテルデは流れ流れて、羊の世界に売り飛ばされた。
「初めからあの悪魔を売るのが目的だったんですかね」
テルデは希少な動物で高値だとしたら、狙っていた奴は多いかもしれないが……それなら直接奪いに行った方が早い気もする。
「売ったのは部下が金に目がくらんだか何かで、最初からそれが目当てではなく、あくまで主人を捕らえる事みたい」
テルデは濡れ衣と言っていたが、実際は工場で何か犯罪めいた事をしていたら、罪人を解き放つ事になるので偵察が入っているのは知っている。
でも私達が行くのはまだ早い気がするので、断る理由として頭の隅においた。
「実は悪人だとマズいですよね」
「無実だったよ、知ってて捕まえたみたいだから」
「――えっ?!」
意味が分からず目を丸くしていると、ここからが本番だと言わんばかりに、木村さんの目が真剣になったように見えた。
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