聞き耳サプリ

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飼い主の名はタラサという牛人間だが、山小屋で住みだしたのは数年前で、それ以前どこで何をしていたのか他の者と関りを持たないので知られていない。 悪者ならイザリ屋が調べるとすぐに分かるらしいので、犯罪者ではないが現在捕まっているにも関わず、弁解もせず黙って刑務所で捕らわれているのは疑問だ。 「無実だと刑務所の人に訴え出ないんですかね?」 「刑務所より、極悪人を収容する監獄に移されてるみたい」 「えっ、いきなり死刑とかないですよね」 他の世界はシステムが分からないが、裁判等が行われないなら、即刻処刑も有りうると思い焦って質問した。 「それはない、罪人はすぐには楽にさせてもらえないから……」 そこで口を閉じた微妙な間で、これ以上聞くのを止めようと思い説明を待った。 監獄に行くのは分かるが、私達は女性だし罪人として潜入しても、その飼い主と会えないのは分かっている。 こちらの世界での発想だが監獄に男女ペアは不自然だし、面会人として会いに行くというのが無難だろうが、そんなシステムがあるとも思えない。 「百合達にはまず面会に行ってもらうわ」 予想した言葉だったので当たったと少し嬉しくなったが、会いに行く者がタラサではなく、監獄の責任者と聞いて嫌な予感が膨らんでいく。 そんな奴に会っても仕方ないし、濡れ衣だと訴えても聞いてくれる筈もなく、今回の作戦の意図がイマイチ分からないでいた。 「テルデの要望は『主人に会いたい』だから達成はされるでしょ」 「えぇ、まぁ……」 イザリ屋が仕事として引き受けたとしたら執行的な話か、何処の世界かの警察的組織のトップクラスもしくは上のランクと交渉してるはずだ。 幾らテルデが希少生物だからといって、それだけの理由で仕事をする訳がないので瑠里と首を傾げた。 「牛の世界のトップと話はついてるから安心して」 心配をさせないよう言ったのかもしれないが、逆に何で牛の世界のトップが出て来るという疑問が浮かび、詳細な話もないままパネル部屋に向かっていた。 何らかの方法で連絡を入れるのでまずは面会し、言われた事は引き受け、後は流れに身を任せてとザックリとした説明でリュックを渡される。 不安だったが木村さんが檻を持って来ると、中の二つの目は早く連れて行けと言うようにギラリと光っていた。
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