聞き耳サプリ

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潜入等で数日過ごしてみると、敵の強さが桁違いで訓練でもしてない限り抵抗も出来ず、従うしかない光景を目の当たりにしてしまう。 当然だが執行を失敗出来ないし、自分も死にたくないので必死にもなり、結果何とか首の皮は繋がっている。 悲惨な貧乏暮しを経た私達は、しぶとくがめつい一面があるので、社長達にとっても好都合なのかもしれない。 「そういえば、街にスイーツ店が出来たんだっけ……」 母にはダイエットを勧めているが、私達は貧乏すぎて食べれなかったり、我慢した事に挑戦するのを楽しみの一つとして働いている。 そうでなくても食欲の秋は美味しい甘味が増えるので、ワクワクしてしまうのは無理もない。 シャワーを終えると現実に戻されたように、母がおにぎりを握って皿に置いてあり、漬物も添えられていた。 「今日は混ぜ込むタイプのわかめにしてみたよ」 「……うん、有難う」 瑠里は頬張りながらテレビを見ているが、母の分はウナギ弁当を買ってきたらしい。 「やけに差があるよね」 「何言ってんの、働く前は腹八分目だよ、百合はウナギ嫌いだし」 なら瑠里もウナギで私はハンバーク弁当といった手もあるのに、変わらず仕事日はおにぎりと漬物で、たまに味噌汁がつく質素さだ。 「回転寿しのチラシ入ってたの見た?次の休み辺りいいよね」 テレビの時代劇は悪人が冷酷で、闇のばくちで借金を作らせ、娘を売り飛ばすがバックに代官がいて厄介な展開だった。 町奉行の主役が捜査に乗り出すが、私達と違って頭がいいので、名推理もあり手下と連携し悪事を見事暴き一件落着となる。 「そろそろ準備したら」 気づけば夢中になっていて、母に注意され着替えたがあったかインナーがないと、このエリアは肌寒いというか冬の気候に近い気がする。 「出たよペンギン軍団、まだカイロは貼ってないけど厚着だよね」 「私らは身体のお肉が豊富じゃないし、風邪引いて休めないから」 瑠里が嫌味を言ってもサラリと交わし、カロリーが低いソーメンするめの袋を手に、テレビの前に移動する母。 着替えが済むと母達に見送られ、今期ようやく買えた薄型のあったかジャンパーを羽織り玄関を出た。
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