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翌日は昼前まできっちりと眠り、本来は休みだが木村さんとの約束もあるので支度をして職場に向かった。
玄関で帰りにコンビニで何か買って来てと声をかけ、王子達も散歩がてら連れて行ってと追加され、仕事なのに能天気な母に溜め息が漏れる。
でも久々に王子と会えた気分だったし、昨日までは可愛げゼロの希少動物といたので、抱っこして癒されたかった。
なのにジロリと睨まれてから前足でガードされたので、今イナリの声が聞こえない事を幸せだと思いたい。
「なんか、いつもよりつれない気がする」
「テルデと仲良くしてたのバレてるのかも」
幾ら鼻が利くといっても、そこまでは分からないだろうと思いつつ、いつものようにグンとリードを引かれ小走りで従業員入口を通り過ぎた。
品質管理の受付には木村さんが微笑んでいて、イナリ達を連れて行っても特に何も言われなくなった。
元々連れてきたらダメとも言われてないし、任務に同行させる人もいるので、怒られる事はない。
指示された部屋にはコーヒーメーカーが用意され、疲れを取る為かパンもあって、かなり有り難かった。
勿論イナリとあんぱんを分けていると、瑠里とキセロはカレーぱんを半分こしていた。
「大蛇のくせにカレーぱんって雑食だよね」
「いや……犬であんぱんも微妙だと思うよ」
私とイナリにとっては思い出の食べ物なので、いつまでも分け合えたらとしみじみと思ってしまう。
そんな空気を遮るように登場したのはキツネ面の社長で、木村さんが入って来ると予想していたのに、どんだけしゃべりたいのかと呆れた視線を投げた。
「お疲れ様……昨日は説明しようと喉の調子も整えておったのに、サッサと帰って冷たいよね」
「前日あまり寝てなくて、申し訳ございません」
「なにその素っ気ない感じ?早く進めろやみたいな圧力」
素直に謝ってみたのに、それはそれでケチをつける面倒な年寄りに腹立たしさを覚えた。
「ま、まぁ進めるがの」
反応を変えたのでイカつい顔になっていたようだが、木村さんが遅れて入って来たので、丁度いい気分の切り替えになった。
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