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朝晩が冷え込むのでコートを羽織ろうか迷ったが、まだ早いと言われナイロン製のジャンバーで我慢する事にした。
暑ければ脱げばいいだけなのに、十二月以降はどうするのかと注意する母だが、真冬になればカイロを張ったり手段はいくらでもある。
これで様子をみようと玄関に向かうと、いつものように見送られ徒歩五分の職場へ急いだ。
着替えを済ませ部屋に入るとリーダーと啄はいたが、和音さんは他のヘルプでもう働いてるらしい。
コーヒーを飲みながらリーダーに牛の世界のチカラについて話をすると、とうとうその壁が見えてきたかと表情を強張らせた。
「心配しなくてもすぐにどうこうならないだろ、お前らは今の能力もまだ無限の可能性を秘めてんだから」
「ですかね……でもお守りは貰ったんですけど」
顔が引きつるリーダー達の前にお守りを出すと、気にすんな自分のペースでいいとフォローされたが、目がそう言ってないように思えた。
「百合達には始めから驚かされたし、チカラを貰っても納得だが……使いこなせると本当に金刺繍の催促がくるから注意しろよ」
「はい、望んでませんし今の生活を壊したくないんです」
「化け物でもいて貰わないと、こっちだって人数不足だしな」
会話の入り方は気に入らないが、啄もそのままでいいと言ったのは意外だった。
怪かしを倒す為にはどんな能力だろうと邪魔にはならないし、むしろこのチカラは好都合だと思える。
どんな術を使えるようになるかは不明だが、啄は親族だし早くトレーニングを積めと言われると予想していた。
今夜の任務は蛇人間の執行だが、無色チームの時のような感じではなく、見た目は人と変わらないタイプらしい。
「何か蛇も術使えそうで怖いですね」
「そうなったら金刺繍の上クラスの担当だ、こっちには回ってこない」
断言したリーダーだが、既に出会ってんだけどという言葉はグッと堪え、二人を不安にさせないよう我慢した。
五十人程度の敵を分担して執行し、完了すると仕上げに啄が薬を撒きパネル部屋に戻った。
シャワーと着替えを済ませ受付に行くと、木村さんに部屋を指示されコーヒータイムだと思っていたが、既に先客がいたので顔をしかめた。
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