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「皆ぁお疲れ様、コーヒーで一息ついたらご褒美に祭りでも行かんか?」
「どこの?」
真っ先に啄が聞き、場合によっては参加しないといい出しそうなので私達もそれに便乗したい。
仕事が終わったらさっさと帰りたいし、キツネと行動を共にしても、何かに巻き込まれそうで怖いのもある。
「狐……といってもずっと西側で朧が住んどる場所から離れておる」
「行く!」
断ると思っていた啄が裏切るという事は美味しい物があるに違いないが、どうする?と瑠里の顔を見た。
「祭りは母の田舎でもあるし別に興味も……」
「あそこはチーズ煎餅と肉そばが有名で、お前らも食べてみた方がいいぞ」
瑠里はもう魅かれていたが私が迷っていると、小豆のスイーツや神楽もあって、収穫を祝う祭りだから楽しいと後押しされた。
全部社長のおごりだと確認しパネル部屋に入ると、木村さんが小さなリュックを渡してくれ、準備は万端だった。
「楽しんで来てね、あそこの収穫祭は美味しい物沢山あるから」
木村さんに言われると少し楽しみになってきたが、油断はしないよう自分に気合を入れ、社長の後に続いた。
近い場所に出たのもあるだろうが、もう笛や太鼓の音が聴こえ、景色が祖母の田舎みたいで親近感も湧いてくる。
見た目は人に近い者や少し狐よりの者、あとは観光客と地元の者もいるが、特に違和感なく楽しんでいるので大きな祭りのようだ。
屋台は私達の世界と変わらないが、色んな種類がありすぎて目移りしてしまう。
「百合は悟とチーズ煎餅と揚げどら買って、俺は瑠里とそばの順番取っておく」
食べ物に関しては啄が仕切りだしたが、私だと迷って時間がかかりそうなので、決まってる方が有り難い。
順番を待つ間も舞台の神楽が見えるし、いい匂いにテンションもアガり、王子達も連れて来てあげたい位だった。
「ほれ、お面も買ってきたぞ」
こんなに食べ物が沢山あるのに、社長が買って来たのはゆるキャラみたいな狐のお面で、私は白でリーダーは黒が渡される。
「いらないんスけど……社長は被らないくても自前でいいじゃないんですか」
「せっかく来たんだし、楽しもうと思っての」
何故か面押しするが、周りを見ても被ってる人はいないので、おでこ辺りにつけて誤魔化しておいた。
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