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目的の品が手に入り瑠里達と合流しようとすると、肉そばは立ち食いのようで三人の後ろ姿が見えた。
「あいつら裏切って先に食べてません?私は肉いらないし、リーダー行って来ていいですよ」
「おぅ悪いな」
メニューのポスターを見て思ったが、想像とは違い温かいそばの上にカットステーキが乗っているリッチな品なので、瑠里が飛びつくのも無理はない。
多分すぐに食べ終わるだろうと思い、木の下でチーズ煎餅を試食してみると、こちらも予想以上の美味しさで一人で頷いていた。
醤油の煎餅にチーズがまぶしてあるだけだが、パルメザンチーズみたいにクセがあるのでついつい手が伸びてしまう。
チーズ好きな私としては大満足だし止まらなくなっていると、後ろの広場から声が聞こえて振り返った。
「生意気に屋台で買い物してんじゃないよ、貧乏人が!」
「お前には勿体ないんだよ――っ!」
男の子が同年代数人に囲まれ、買った物を取り上げられようとしているが、関りがないと思いつつ貧乏というフレーズが引っかかり面を被った。
「これは俺達が貰って行く、お前は隅の方で祭りを楽し……」
「な、何だお前は!」
一番体格のいい奴からお菓子を奪い取ると、手下のガキが声をあげた。
「やかましい!祭囃子に誘われて通りすがった貧乏人だ、弱い者いじめしてんじゃないよ」
大きな声にビックリしたのか子供達は走って逃げたが、いじめられた男の子も去ろうとするので肩に手を置いた。
ヒッと声にならない悲鳴をあげたが、お菓子を渡すと頬から涙が零れている。
「お金貯めて買ったんだろ?きちんと持って帰らないと」
服についた泥を払ってやると、お菓子を食べて神楽を見る為に貯めたと目頭を擦っていた。
「悔しさをバネにしぶとく生きて行くんだよ、貧乏人は丈夫だからね」
木の下に戻ろうとするとつなぎを引っ張られ、辺りを見渡すと先程のガキが強そうな男性達を呼んだようだ。
「腹立つガキだな……可愛げのカケラもないよ」
見たからに悪そうな青年が五人揃っていたが、田村さんの方がよっぽど怖そうなのであまり響いてはこない。
「何か御用でしょうか、私達神楽見に行くんですけど」
ニヤニヤ笑いながら近づいて来たが、その後ろには同じくキツネの面を被った職場の仲間達が囲むように仁王立ちをしていた。
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