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「美味しそうなの沢山買ってるねぇ、俺らにも少し分けてよ」
「いや……後ろにいる仲間のだから、譲る訳にいかないんだよね」
狐人間が背後に面をつけた偽キツネに囲まれる図は笑えるが、ポッチャリしたシルエットがないので違和感を覚えた。
瑠里と社長と啄とリーダーの筈だが、妹以外のシルエットがスリムなのに加え人数が一人多い。
「なんだお前らは」
チンピラ狐が代わりに聞いてくれたが、瑠里は『祭囃子に誘われて…』と始め、姉妹で考えが似てるのが若干恥ずかしい。
「やって来ました般若一行!」
「煎餅に手を出す悪い輩は……」
「山奥に引きづり込まれるぞ」
打ち合わせでもしたかのように一節づつ言い、キツネの面が妙に不気味だと感じたのは、チンピラも同じみたいだ。
こいつらなんかヤバいと一人は逃げたが、残りは殴りかかろうとして倍返しにされていた。
覚えてやがれと逃げるパターンだと思われたが、面の一人がチンピラの足をロープで縛り、見事に木に吊り下げて行く姿は職人技のようだ。
暫くボーッとその光景を見ていると、啄が飲み物を買って来てやったと袋を見せたが同じく面を被っていた。
子供は明らかに引きつり笑いをしていたが、飲み物を渡され木の下にシートを敷く狐の面に手招きされると、何故か無言で座っていた。
「てか、いい加減面を取れや!しかも初めに来たメンバーより増えとるやろが」
「このお面、口の部分が少し開いてるからそのまま食べれて便利なんだよね」
瑠里に煎餅の袋を渡すと皆で分けて食べ始め、私も外すタイミングを失い、揚げどらに手を伸ばした。
「ここの祭りは見て良し、食べて良しといい事ばかりじゃ」
「来るなら連絡くれればいいのに、水臭いよね」
会話を聞いた時点で子供以外の動きが止まり、社長の顔を見るとサラリと目線を逸らされた。
朧達だと分かると私は面を外したが、本物の狐がキャラの狐の面を被るノリについていけない。
「何してるんですか、ここは住んでるエリアと違いますよね?」
「チーズ煎と久々に姉妹の顔が見たくなってな」
朧も面を外すと爺さんには見えたが、以前とは違っているので相変わらず本当の姿はよく分からない。
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