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「チーズ煎餅おかわりいる人!」
相変わらず桜舞は食べ物の事しか考えてないとは思ったが、反射的に右手をあげていた。
「百合も一緒に買いに行こう、一人だと七つが限界だし」
請求は社長に頼むと立ち上がったが、そんなのいらないとにこやかに言われ、何個でも持ちますと手ぐすねしたい気分だった。
「他にも何か買ってきて」
瑠里が付け加えると、ワシが買うてやると社長も立ち上がり屋台に向かった。
ここの神楽は猿の世界とは違い迫力というよりも優雅だし、面もキツネなのでパッと見は巫女が舞っている風だ。
私は鬼や般若、大蛇が出てくるタイプが好みなので、母と秋祭りで見るのもいいかもと思いつつ煎餅の屋台に並んでいた。
「百合ウチに来る時はグミと新作のお菓子持って来てね」
「いや、限度あるから」
朧もグミは気に入ってるし桜舞はスイーツ類が大好きだが、エンドレスで食べるので箱で持って行っても間に合わない。
「まぁ、味見程度でいいからさ」
久々に会ったが、あんなに食べるにも関わらず啄とは違いスリムで、どんなサプリを飲んでるのかと思う程だ。
「やっと百合も野蛮な戦いから俺達に近づくんでしょ?ワクワクする」
「私は今の戦い方のままで、妖力を使うのは少しでいい」
狐人間を前にすると何故か妖力と言ってしまい、プッと笑われたがネーミングは似合う気がする。
「俺ら妖怪みたい」
十分やっていけると言いたいが、呪いでもかけられたらマズいのでソフトな言い方を頭で考えた。
「でも、化かしたり瞬間移動したり……妖怪より大物だと思うよ」
「他にも色々出来る事あるしね」
チーズ煎餅を両手一杯に持ち皆の所に帰ると、子供の姿はなく、リーダーと啄と朧という妙な組み合わせだったが盛り上がってるようだ。
満足して帰っていったと聞いてホッとすると、話の続きに戻ったのは分かるが、何処かで見た内容だ。
「なるほど……ではその侍は敵を倒す時にキメ台詞をいい、ラストシーンを迎えるという訳か」
「そうだ、大体時代劇はそんな感じだが、漫画だともっと面白いぞ」
時代劇から忍者探偵Ⅹの話に変わる頃、社長達も帰ってきたので更に拍車がかかり、桜舞と無言で煎餅を食べ続けた。
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