祭囃子《まつりばやし》に誘われて

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「忍オタは放っておいて、私らは食べながら神楽でも見よう」 リーダーも混ざり三人で見ていると、始めは物足りないと感じていたが、妖艶な舞に目が慣れ音色も落ち着かせてくれるようで心地いい。 田舎の神楽が背中を押すような迫力の舞だとすれば、ここのは少しの休息といった感じでゆったりと見ていられる。 「これも中々いいですね」 「でしょ、土地柄が出るから深いし楽しいよね」 私と変わらない年齢に見えるのに、渋いコメントで神楽マスターみたいに思え、実は七十歳超えてたりして……と頭を掠めた。 祭りを堪能し解散となったが、シャワーと着替えを済ませ受付に向かうと、木村さんが部屋を指さし待機するよう言われた。 既に朧に誘いを受けてるのは承知してる感じなので、社長から聞いたのかもしれないが、木村さんが知ってるなら少し安心だ。 リーダー達は既に中でコーヒーを飲んでいたが、私達の顔を見るとお気の毒に……という表情をされてしまった。 「一人で行くの怖いので、足手まといでも構わないからリーダーもついて来て下さいよ」 「……散々な言われようだな、でもマジで親族しかお供出来なさそうだし、もっと実力つけないとだな」 真面目なリーダーは顔に似合わず気にしてるようだが、本来私達は新人なので十分だと思う。 「周りが化け物ばっかなんでそう思えますが、私らは新人の割に頑張ってる方ですよ」 「化け物の般若に言われても説得力ないだろ」 「うっさいんだよボンレス!お前こそ少しは親族らしくもっと痩せろ!」 先輩に向かってと顔を真っ赤にし、腹を立てているのは分かるが、木村さんが入って来たので一旦お預けになった。 私達は明日から二日間レクレーションの為、狐と河童の世界に泊まる事に決まり、許可は下りたと言われため息が漏れる。 むしろ反対してもらう方が有り難いが、引き延ばしてもいずれ通る道なので、きっかけ程度のぞき見してもいいかもしれない。 それぞれ付き添いが一人つくが予定を調整中だと言われ、ある意味そっちもドキドキした。
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