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「いきなり使いこなせませんよ」
「いや、まだ牛のチカラではないがね」
別のチカラも貰ってる分どれが出たのかよく分からないが、牛のチカラが解放されると目安があるらしく、まだこんな戦いが続くのかと思うと帰りたくなってくる。
「そうですね……一人だと心細いなら次はペアでどうでしょう」
元の体育館の背景になったが電気はついていて、滋さんは端でこちらを見ていたが、イナリに関してはいつものように動きを封じられていた。
王子に向かって両手を伸ばすとダッシュして来てくれたが、抱擁が五秒を過ぎると前足で顔を押さえられた。
「王子ィ今大変な思いしたんだよ、ちょっとくらいいいじゃん甘えたい年頃なんだよ」
「それなら俺の胸貸してあげようか?気の済むまで顔を埋めていいよ」
滋さんが歩き出すと同時に、イナリからサッと離れ回れ右をすると、朧は顎に手を置いていたが軽く頷いた。
「桜舞、相手になりなさい」
日頃退屈なのもあり嬉しそうに近寄って来たが、敵に回ると社長達が戦った、巨大狛犬の幻影を出すのでクレームを出した。
「待てや!あんなのが暴れたら建物壊れるし、金刺繍がいるとはいえ大きさ考えてくれないと」
「いや……百合のパートナーはイナリじゃよ、桜舞もう少し小さく」
滋さんは『はぁ?』という顔で元の場所に戻り、イナリは一歩前に出てドヤ顔を決めていたが、何となくやる気が出ない私に狐は気づいたようだ。
「これが終われば一旦就寝し、明日はパスタランチで手を打とう、百合のお気に入りの牛の世界でどうじゃ」
「――御意、イナリ……明日は美味しい物食べれるからしっかり頑張ろうね」
貧乏人にとって励みとは生きるかてだと言わんばかりにやる気がみなぎるが、この時はまだ昔の思い出が掘り起こされるとは思ってもいなかった。
桜舞は狛犬を牛程の大きさにしていたが、ウチの王子だって球体の風をソフトに作り余念はない。
「なんかさ陰陽師が鬼を使うみたいでカッコ良くない?」
「それ何処情報?最近ウチのドラム缶もイケメン陰陽師の時代劇にハマッてるようだけど」
桜舞はそれらしいが、イナリは見た目はチワワなので凛々しい姿が可愛すぎ、思わずプッと吹き出した。
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