ミーちゃんとご褒美

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「ミーちゃんご飯だよ……しっかり食べようねお互い」 無意識に呟くと、少しの間があってから急に辺りが真っ白になり、思わず目を閉じた。 身体が浮かぶような感覚も気持ち悪くてジッとしていたが、下から風まで吹き目を開けるのが恐ろしい。 何が起こっているのか分からないが、収まるまでは動かない方が安全そうで、頑なに目を閉じて待っていた。 するとどこかで聞いた事のある、ボイスチェンジャーの声が起きろと指示してきた。 そっと目を開けても誰もいないが、真っ白の状況も変わらないので天国かと思えてくる。 「イナリがやられそうなのに、イザリ屋の男は助けもせず寛いでおるぞ」 「寛ぐ……だと?!」 押さえていた怒りがフツフツと戻ってきて、桜舞と滋さんに向けて大きく膨らんでいった。 「王子に何かあったら……全員地獄に落ちてもらうからなぁ!」 バッと起き上がると少し離れた場所で、朧達三人はお茶と漬物を食べていたが、イナリも餌をガッついている。 「あ……起きた」 「さすがは貧乏人じゃ、気合いが違うのぅ」 「やかましい!お前らこそ女の頭殴っておいてティータイムしてんじゃないよ」 便乗しようと近づくと桜舞が遮るように立ったが、フェイントで交わし絶対に何か飲む気満々だった。 「こういう時は本気だね」 「当たり前でしょ、死の淵を彷徨って這い上がってきたんだよ?喉も乾くわ」 朧がくれたお茶を遠慮なく頂くと、牛の封印は解けたと教えてくれたが、まだ何も起こってないのでピンとこなかった。 もっと時間がかかる予定だったが、そこは貧乏である事と既に持っているチカラのおかげかもしれんと漬物を食べている。 「貧乏って連呼しすぎだろ、関係ないじゃん」 「貧しい=ハングリー精神を軽く見てはいかん」 土産で持って来た袋をゴソゴソと探り、グミを取り出してから説明が始まるようだが、私も漬物を口に入れ聞いていた。 煩悩は誰でも持っているが自分だけでなく、家族の為等、貧しいながら生きようとする想いは一味違うと言われたが嬉しくはない。 「ロクな事なかったよ、惨めでひもじくて恥ずかくて……」 思い出しても気分が悪くなることばかりで、いい事なんて一つもなかった。
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