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くせで犬螺眼が出ると思っていたが壁……といっても稲膜とは違い、押しよせる水紋の波を断ち切るように私を守ってくれている。
無意識に手の平を桜舞に向けているが、チカラは身体全体から放出される感覚なのに、炎の時とも一味違う。
慣れないまま攻撃を何となく阻止したが、桜舞は次の一手を打ってきた。
両手の指を上に向けると、今度は身体が風船のように浮かび、防御より先に文句が出た。
「エスパーじゃねーんだよ、こんなマジックみたいな戦い方、説明もなく分かる訳ないじゃん」
「本番だったらもう殺されてるよ?」
「それを防ぐ為の練習やろが!」
大声を出してスッキリはしたが問題は解決してないし、このまま落とされるのは経験済みなので、何としても阻止したい。
通常なら飛べるが、この状態だと動けないまま急降下で自殺者の末路を辿る事になる。
拳を握り何とか出来ないかと頭を捻っていると、身体がゆっくりと地面に向かって下り自分でも驚いた。
「えっ、まだ何もしてないけど……」
頭が混乱しそうだが、犬螺眼も炎を出す時も空を舞う時も、結果自分が強く思った事が具現化されるのでそのパターンから試す事にした。
いつもがイザリ屋モードだとすれば、これはエスパーモードという風に使い分けが必要みたいだし、上手く組み合わせるには時間がかかりそうだ。
今は目の前にいる桜舞を倒さないと褒美を貰えないし、これは練習なんだから失敗しても何とかなる……筈だ。
集中し外に弾き出すイメージで手を翳すと、桜舞に向かって何かが出た気はするが変化がないので、もう一度気を取り直して構えた。
「えっ、桜舞は?」
一定の距離を保っていたが姿はなく、咄嗟に見上げると息を荒くした彼が、こちらを見下ろしていた。
「あっぶね、びっくりしたわ」
よく分からぬまま攻撃したらしいが、本人も気づかないようでは今後の使い道に困りそうだ。
「やっぱり私には、このやり方は不向きです」
朧に向かって口を開くと、透明だったけど竜みたいな形の物が襲いかかっておったと説明してくれた。
自覚がないと困っていると、なら色付けして見えるようにしようと気軽なノリで言われ苦笑いした。
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