ミーちゃんとご褒美

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体育館の近くの建物で今夜は泊めてもらう事にし、シャワーや夕食を済ませベッドに横たわったがすぐには眠れなかった。 「く……苦しい」 一人で心細いと言いたいところだが、ファーストフードを摘まんでおきながら晩御飯もキッチリ食べ、お腹がパンパンな状態だった。 部屋には自由に飲食出来るよう冷蔵庫やコーヒーメーカーもセットしてあり、いたでりつくせりで逆に怖い位だ。 「そうだ、瑠里にメールしてみよう」 今までだと異世界で連絡手段がなかったが、短期留学をしてからはどこでも通じる会社スマホを支給され少し安心感もある。 妹は要領よく新しい事を習得していくタイプなので、もう技を使いこなせてるかもしれない。 私はまだ実感もないし何かヒントになればと期待もあるが、恐らく忍者探偵と結び付けて返事がくるだろうとコーヒーを淹れているとスマホの音が鳴った。 「……あっ、そうなんだ」 妹もまずはお腹がはちきれそうな程ご飯を食べたという感想と、忍術は順調に修行の成果が出ているとしか書かれていない。 違う意味で期待通りの内容だったので、溜め息をついてベッドに身体を潜り込ませた。 狐の世界なのもあるが、その夜に見たのは妙な夢で、起きる直前までずっと色んな場面を目にした気がする。 牛の世話の後ナツメを食べた事から始まり、お爺ちゃんに話すと、大きくても怖くないから優しく接しなさいとアドバイスされていた。 これは記憶なのか夢なのか覚えていないが、それからはミーちゃんに対して恐怖心を捨て、たまに顔を撫でる関係になっていた。 自分でも『そうだったのか』と驚くシーンが多々あり、改めて祖父母の存在が大切だったと考えさせられる。 貧しく親がダラしなくても祖父母は真面目で、農作業のメーンはお祖母ちゃん、お爺ちゃんは平日の昼間は港で働き週末は農業を手伝っていた。 ウチの母の以外に三人の娘がいるので、四人姉妹の為に汗水垂らし、祭りの手伝いに駆り出されたりと何かと忙しい生活ぶりだ。 貧乏暇なしとはこの事だけど、ウチの両親に爪の垢を煎じて飲ませたいと子供ながらに思っていた。
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