ミーちゃんとご褒美

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今の稼ぎなら食事や旅行のプレゼントだって出来るが、少し前までは自分達の生活も苦しかったので祖父母孝行が出来ず悔やまれる。 イザリ屋に入れたのも農業をしていた祖父母のおかげだし、出来れば生きてる間に何かしてあげたかった。 現在は誰も住んでないので老朽化も早いが、お金を貯めていつか綺麗にしてあげたいとも思っている。 そんな思いと共に朝になって目が覚めると、お金繋がりで嫌な事まで思い出してしまった。 寒くなるとスノータイヤに変えないと、祖父母宅に行けない程雪が積もる時があるし、おまけにクリスマスケーキにプレゼントと重なる。 仕事が続くか分からないので極力無駄な出費は避け、母に使い込まれるので給料の額も明かさず生活基準も上げずに頑張っている。 普通なら親が考えるような事だろうが、ウチは例外なので世のお父さん達がクリスマスシーズンは憂鬱だという気持ちも分かる。 どちらにしても働かないと平和な年越しが出来ないので、修行に耐え牛のチカラにもう少し慣れてから帰りたい。 イナリにご飯をやり支度を終えた頃、お食事出来てますと声がかかり部屋を出た。 監視カメラで見てたのかというタイミングの良さは不気味だが、なんせ狐だからと言い聞かせ移動した。 滋さんが眠そうな顔で座っていたが、何となく違和感を覚えたので口を開いた。 「昨日……夜稽古でもつけて貰ってたんですか?」 「分かる?」 イザリ屋の執行グループは基本夜勤なので朝は苦手だが、滋さんにも少し疲労が見えた予想は当たったようだ。 ご飯に味噌汁といった和風な朝食だったが、旅行に来た時のように美味しく感じ綺麗に完食していた。 コーヒーを飲んで体育館に行こうと話をしていると、柱の隅からチラチラと顔半分覗かせ、こちらを見てくるウザい爺さんがいる。 無視しようか迷ったが、どちらにしても絡んでくるのが分かるので仕方なく挨拶をした。 「少しだけど来ちゃった!やっぱ心配じゃん、ダメなのそういう理由?」 瑠里の所にも行ったらしいが、さっさと追い出されたようで少し拗ねている分、面倒臭さが上乗せされている。
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