ミーちゃんとご褒美

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いっその事こじらせてやろうと、モノホンの狐が『逃げたんか』と言ってたと伝えると、人のコーヒーを横取りし文句が始まった。 「誰もいう事聞いてくんないから仕方ないじゃん、社長命令だよ?なのにクソガキ共に断られたワシの気持ち分かるぅ?!」 苦笑いの滋さんと腹を立てるキツネ面を見ているのは楽しかったがそれも数分で飽き、イナリと体育館に歩き出した。 「甘やかさず威厳を持ち、次からは無理にでも聞かせる所存なので、今回は寂しい思いをさせますが般若様ご勘弁くだ……」 「誰が般若だ!」 いつものやり取りに満足したのか社長は逃げるように逆方向に走り、滋さんは一瞬驚いた顔をしたがいつも冷たい瞳に戻っていた。 「身内より扱い方慣れてるし、いつ嫁に来てもいいね」 「死んだ魚のような目で言われても嬉しくないですけど」 素直に嬉しいと言っていいよと、勝手に変換するのも親族共は多々あるので、もうツッコむのも面倒だ。 体育館の中では桜舞がポテチを摘まみ、ホットレモンのペットボトルを置いてオヤツタイムを満喫していたが、他の人には内緒のようだ。 「早く来て凄いと言いたいとこだけど、人目を忍んで間食してただけだよね」 「なっ……そんな事ないよ、百合ったら変に勘ぐって」 食べ終わった袋とペットボトルを、両手でパンと挟むとフッと消えたので、証拠は隠滅された。 そんなやり方で証拠を消す者が住んでる世界で、法律や決まりで取り締まるのは難しそうだ。 「キツネ人間なら完全犯罪出来そうですね」 「だろうね、自ら手を下さなくても言葉巧みに死に向かうよう誘導すればいいし」 「でも魂見えるから、取り締まる側になっても怖そうですね」 犯人は数秒で分かるんじゃないか……というか、犯行前の気持ちから当てそうと話をしていると、本人は首を傾げていた。 「さて、朧が来る前に練習を始めて完全犯罪成立させよう」 セコイと思ったが、ウチの母でも黙ってお菓子を食べたらバレるので、朧の目は誤魔化せないだろうと思い向かい合った。
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