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細い路地を通り石畳の道を上って行くと、目の前に三階建ての建物は見えたが思っていたよりも奥に長く広そうな感じだ。
ここのエリアは普通レベルの人……いや羊人間達が暮らしていて、貧しい者は住めない場所らしい。
きっと家とかアパートの家賃も高く、部屋には絵が飾ってあり朝食から何品も出て、もしかすると家政婦を雇っているかもしれない。
一人で妄想を膨らませ、少し苛立ちながらリーダーの後に続くと、階段を降り地下入口の鍵を壊していた。
手早く音も立てずスムーズだったので、明日から盗人になれそうだと褒めたのに、ギロリと睨みつけられ中に入る。
地下の石畳独特の冷たい風は、虎の世界に面接に行った日の事を思い出し、懐かしいが裏方として働くのは大変だったので少し口角が上がる。
歩いてた順番でリーダーと組む事になり、彼がドアを開けた直後に中に入り一瞬で攻撃を終えていく。
ここの者は全員執行となっているので話を聞く事もないが、私は狐のチカラで魂の色が見えてしまうので、特にためらいがないのかもしれない。
誰を見ても心臓辺りにゆらゆら燃える炎はドス黒く、手の施しようがないと分かる。
一部屋に五人前後いて、手術室に置かれてるようなベッドがあったり、別の部屋では大きな刃物が並んでたりと異様な光景に首を傾げる。
「借金が払えないと売り飛ばされるんですよね?」
「それだけではないと聞いていたが、趣味が悪そうだな」
瑠里達と合流し最後の大きなドアを開けると、斧のような武器が飛んで来て、慌てて稲膜を出すと透明の壁で弾れた。
無駄だと感じた敵はブツブツ言いこちらを見る者と、奥に逃げる者に別れ瞬時に追おうとすると、グンッと身体が引っ張られたように動けなくなった。
『こいつら……飾磨と同じ技使える』
声も出す事は出来ないが、瑠里達も同じ様に動けなくなっていて、羊人間の目は今まで執行した罪人と同じ雰囲気だ。
おまけに白いクセ毛で覆われていると勝手な想像をしていたが、見た目は私達と変わらないので、双棒で攻撃し灰になる時に納得した位だった。
上下白の作業服で研究員みたいにも見えるが、マスクを外した顔は奇妙な笑みを浮かべ、不気味でしかなかった。
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