ミーちゃんとご褒美

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身体にチカラが集まるのはいつもの事だが、そこからイザリ屋モードではなく、エスパーモードに切り替えが必要になる。 「いや『ミーちゃん』と呼ぶ方がすんなり入ってくるかも」 自分が分かればいいので、名前なんてどうでもいいし、仕事の時とは違う方向で放出したいだけだ。 「掛け声を出してもいいぞ、例えば『貧』や『般』とか!」 「悪口にしか聞こえないんだよ、貧乏と般若だろうが!」 遅れて来たのに状況を見てたかの如く、いきなりアドバイスするのは狐人間らしいが、おかげで桜舞に一瞬の隙が生まれた。 「般――っ!」 字は違うが時代劇での博打シーンを思い出させるような掛け声を発すると、桜舞の動きが止まったような気がした。 技がかかったのか、こちらの様子を伺ってるだけか全く読めず、もし何も起こってなかったら大声を出しただけ恥ずかしい。 覗き込むように少し近づくと口角が動いたのを見て、反射的に後ろに下がった。 「死んだフリとかズルい!」 「正々堂々と挑む敵の方が少ないよ?」 「今はトレーニングなんだから、技がかかったとか解いたとか合図してもらわないと全然分からない」 面倒な注文だと自覚してるがまだ慣れてないので、この感じだと攻撃が当たったかすら気づけない。 「そうそう、その問題を解決する為に少し手間がかかってな、ブレンドで鶸萌葱(ひわもえぎ)色にした」 「……鶸萌葱?」 萌葱はチームカラーだが、朧が知ってる筈もなく……いや何処かで見ているかもしれないが、普通なら分からない内容だ。 目線をあげ思案顔になったのを見ると、牛と言えば草だけど緑じゃ単純だし、淡い光にしないと敵に気取られる等を考えた結果だと説明が入った。 「はぁ、あの、助かります」 ミーちゃんモードに切り替えた目安も把握出来ないし、ボーダーがないとモヤモヤしたまま帰る事になる。 練習もしたいのでそこが解決するとかなり有り難いし、攻撃や技がかかってるのかをやっと知れるのでドキドキしていた。 一旦中断されたが桜舞が指をあげるポーズをしたので、また宙に浮かせる気だと思い、牛のように重くなれと強く念じた。
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