ミーちゃんとご褒美

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全身に微かな光が放たれているが、柔らかい黄緑に深みをかけたような優しい色合いだ。 ミーちゃんの鋭い眼差しとは違い、草を食べてる時の穏やかさを思い出すような感じで落ち着く気もする。 「私はミーちゃん、重くて浮く事は出来ない……」 ブツブツと唱え頑張ってみたが、それも数十秒足らずでゆっくり身体が地面から離れていった。 「やっぱダメか、本物の悪には勝てない」 「ちょっと、人聞き悪い言い方止めてくれる?」 思わず妄想が口から洩れてしまい、怪訝そうな顔で見られたが色付けされただけでも大きな収穫だ。 「宙に浮いた位どうだというんです?百合は多くのチカラがあるでしょう、十分対応出来る筈ですよ」 何かを掴みかけるとハードルを上げ、ずっと目の前に人参を吊るされてる感覚は、社長のトレーニングと変わらない。 いつまで経ってもレベルアップやスキルアップを求められ、実感が湧かない嫌なパターンだ。 「どの世界もキツネはロクな奴がいない」 「それでも、神のように崇められておるという事をお忘れなく」 かなり小さめの声で言ったのに、年寄りの地獄耳並みに聞き取れる狐はやはりただ者ではない。 集中が切れたので一旦休憩にしてくれと思っていると、察したように桜舞がお茶にしようと誘ってくれた。 「俺はそこで見学してる死神と遊んでみる」 何かと反りが合わない二人のトレーニングは嫌な予感もするが、戦いのヒントになるだろうし、一息入れ頭も整理したい。 隅に移動するとイナリを抱っこして腰を下ろし、朧も隣に座ると、タイミングよく使用人が水筒と茶菓子を運んでくれる。 何もかも見透かされてるようで不気味だったが、逆に考えると言わなくても察してくれ、よく出来た嫁のように機転が利く。 「いいお手伝いさんに囲まれて幸せですね」 「優秀すぎなのも中々大変なものだよ」 確かに悪い事が出来なさそうなので、チカラを授けに行くついでにストレス発散してるのかもと妙に納得した。 滋さん達が向かい合うと、何となく感じるオーラに飲み込まれそうで、まだ敵わないと身が引き締まる気持ちになる。
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