ミーちゃんとご褒美

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「何これ!メチャ美味しそう」 「女性は切り替えが早いな」 盆に乗せてある茶菓子をチラ見すると、大きな栗が敷き詰められた茶色のケーキのように見える。 そんな魅惑的なモノがあると死神達の戦いより、天秤はこちらに傾くに決まっている。 「百合が来るから用意したんじゃろ、有名な栗蒸し羊羹じゃ」 時期的にはもう冬に近いので今年は最後かもしれないが、こんな贅沢な和菓子が食べれるなら狐の世界の印象も若干変わりそうだ。 ゴロッとした栗は少し甘くしてあるが、羊羹がその分アッサリで調和も取れているし、渋皮もアクセントになっている。 「これ美味しいわ……何個でも食べれそう」 頬張りながら前を向くとビクとも動いてないが、死神と悪魔の対決は続いていた。 身体から発するオーラのような光は、金色に見えるが穏やかではなく刺々しので、善に使われそうにない雰囲気だ。 私が『般』という掛け声なら、アイツらは『殺』もしくは『悪』と言って欲しい位だ。 桜舞が攻撃に入ると、私が言われたように竜とかでなく、巨大な氷のような物体が滋さんの結界に刺さっていく。 「アレが当たれば、即座に死にそうですよね」 「見えるようになってきたかの?当たれば……というか掠っただけでもダメージはある」 絶対に練習したくない相手だが、ここでのトレーニングは死神か悪魔しかいないので、順番が回ってくるのが怖い。 恐怖から回避する為、先程の妄想作戦で行くしかないが、悪代官の手下が揉めている事にするしかない。 取り分が少ないと醜い争いをしていると思えば、怖いより倒そうという活力になりそうだ。 そう思わないとこんな化け物達と練習なんて出来ないし、瑠里の忍者探偵を馬鹿にしていたが、気持ちの上でいい隠れみのになりそうだ。 手下達は剣術の他に陰陽師的な習い事も受け、金があるので普段から自分磨きにも余念がない。 農民に無理難題をいう悪役は、いつ命が狙われるか分からないので、貧乏人では決して習えない芸当を身に付ける事で威厳を保っているのだ。 金で陰陽師まがいな技を手に入れ、貧乏人へお披露目してる設定で見ると、私は天然のチカラでいくと意欲が湧いていた。
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